花井盛彦の日記

HANAIプロダクション・NA花井盛彦手話教室 代表 手話アーティスト

盛彦コラム #4 作り上げられたイメージ

オレ高校まで、ずっとろう社会の中で生活をしてきた。
だから、いろいろと驚いたこと多かった。

祖母は健聴だったけど、両親がろうだから、
聞こえない中での生活は当たり前のことだった。

電話も不思議なものだったし、
なぜ皆は聴こえるのかもすごく不思議に思えた。

外の世界は健聴ばかりで、聴こえないことは珍しく、
なぜ聞こえないのか不思議だっただろうな。

両親や友達からは、良いとは言えない健聴の話をされた。
健聴には騙されるなと。
聴こえないから、騙すことなど簡単なのだと。

ろう学校の先輩からも、健聴との恋愛はやめた方がいいよ!
とアドバイスされた。

ろうは電話も出来ないし、
他の誰かと電話しても内容確認が出来ないから、
彼女が裏で何やってるかなんてわからないよ。

健聴は日本語対応手話するから疲れるし、
コミュニケーションなんてとれないよ。
やめた方がいいぞ!
なんていう話題は、日常的だった。

本当か?
あるある、本当だよ!

…そんなイメージを吹き込まれて育った。

高校卒業後、サッカーの為にスポーツの世界に入ると、
ろう者を見るのが初めてという人ばかりだった。

介護、福祉関係の人はろうへの認識はあるのかもしれないが、
スポーツの世界では皆無…それが現実だった。

 『愛してると言ってくれ』というドラマの影響などで、
ろうでも、健聴者が読み取ることができるイメージが強いのか、
ろうに対するいろいろなイメージを持たれていた。
テレビドラマと現実は違うのにだ。

『ろうって、食べること出来るの?』
と、言われたこともあった。

なんだよ、それっっ!

かわいそうとか不便だねとか、劣っていると見下されることも
日常的にたくさんあった。

聴こえないとそんなイメージなのかな…

ろうへの想像力足りないよ。 

実際に会ってみて、判断するべきだよな。
イメージだけで決めつけないでほしい。
健聴だけじゃない、ろうも同じだよな。
勝手なイメージを押しつけるのは、良くない。

性格は一人一人違うのだから…。

真面目なやつもいれば不真面目なやつもいる。
みんなそれぞれなんだよ。

国際結婚もいろいろだよね。
国や文化がちがっても、
一番大切なのは、本人の気持ちだよ。

オレも健聴者に会う前とでは、イメージ変わったし、
健聴からも、ろうのイメージ変わったと言われる。

前に会ったろうは性格暗かったから、
ろうは皆暗いのかと思ったら、違うんだね、と言われたこともあった。

性格だって一人一人違う、明るいやつだっていっぱいいるよ。
健聴だって、いろいろいるでしょ?

イメージにとらわれず、実際に会って、
自分で判断すること、それが一番だよ。

芸能人だって、作られたキャラってあるよね。
実際とは違うと思うよ。

周囲から、『ろうには出来ないから』とイメージづけられて育てられる。

そうすることによって…
はばたこうとする羽までも、もがれてしまう。

希望をもって伸びようとする心までも、つんでしまうんだよ。

それは本当に悲しく、もったいないことだよな。

そして言葉に翻弄された結果、
人生まで左右されてしまうこともある。
そのことくらい怖いことってないよな。

もし違うことを言われて育てられてきたら、
人生変わっていたかもしれない。

逆に、それをバネに壁を越えられることもあるし。
どちらがいいのかは、それはわからない。

オレさ、ろうだからムリだといろいろ言われてきた人生だった。

悔しくて、本当に悩んだ。

オレ、悩んだり気持ちが沈んだ時など
特にろうだからとか、弱いから、諦めなきゃいけないのかとか、
本当に悔しくて、何度もくじけそうになったことがある。

本当に悔しい気持ちになるよ。

オレ自身って何だろう?
花井盛彦らしさだ。

ろうとして、ひとつにくくられるのはやっぱり嫌なんだよ。

だってさ、オレはオレなんだよ。
性格、考え方、気持ち…オレはオレ、
たった1人の人間だから。

そして、人として、心をもっと強くしていきたい。

結局、自分次第だよな。

目の前の壁を越えるのも、越えられないのも、
自分の力にかかっている。

自分から見方を変えれば、見る人も変わってくれる。

周りがどう、ではなくて、
自分自身が努力し、自然とまわりを変えていくこと、
それが一番大切なことだよな。

自分の可能性を信じ、努力し、目の前の壁を越えれば 、
世界も広がり見え方も変わってくる。

自分自身が変わることで、
不可能を可能にする事ができるはずだよ。

変えるのも変わるのも
すべては、自分次第だ。


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